スーパースターのフットサル/アレシャンドレ・パト(ミラン/ブラジル代表)スーパースターのフットサル/アレシャンドレ・パト(ミラン/ブラジル代表)

サッカーのスーパースターの中には
フットサルでテクニックを磨き上げた選手も少なくない。
今回はミラン、ブラジル代表のエースとして
活躍し始めたアレシャンドレ・パトに迫る!


4歳の時に地元にあるフットサルチームに加入

 ご存知の方も多いだろうが、「アレシャンドレ・パト」という名前は本名ではない。1989年9月2日に生を受けた彼は、両親から「アレシャンドレ・ロドリゲス・ダ・シウヴァ」と名付けられた。本来なら「アレシャンドレ」と呼ばれていたであろう彼の呼び名が「パト」となったのは、ブラジルのインテルナシオナウに所属していた頃である。チームには彼を含めて3人のアレシャンドレが在籍していたことから、他の2人と区別するためにブラジルのパナマ州、パト・ブランカという町を出身地とする彼に、「パト」というニックネームが付けられたのだった。それ以降、出身地の地名であり、ポルトガル語でアヒルを意味する「パト」が、彼の呼び名になっている。

 彼のサッカー人生は、まさにこのパト・ブランカから始まった。物心ついた時にはすでにボールを蹴っており、屋内外問わず、ボールが足元になければ近くにあるものをボールに見立ててプレーしていたという。4歳の時に地元にある「グレミオ・インドゥストゥリアウ・パトブランケンセ」というフットサルチームに加入。フットサルによって基本技術を身に付け、才能を磨いたパトは、「あまりの展開の早さに目が回りそう」と本人が驚くほどのスピードでそのキャリアを駆け抜けていった。

 11歳でインテルナシオナウの下部組織に入団。クラブのフロント陣は、フットサルを通じて培われた彼のテクニックを10分間で見抜いたという。下部組織で頭角を現した彼は、17歳でトップチームデビューを飾る。パルメイラスとのデビュー戦では、途中出場から94秒後にファーストタッチでゴールを挙げた上に、3アシストをマーク。一躍脚光を浴びた。2週間後にはクラブワールドカップ出場のために来日。準決勝のアル・アハリ戦で見せた、右肩でリフティングをしながらピッチを駆け上がっていったシーンは記憶に新しい。決勝ではバルセローナを下してクラブ世界一の称号を手に入れた。驚くことに、パトにとってはパルメイラス戦でデビューして以来、プロ3戦目でのビッグタイトル獲得だった。07年夏、18歳の誕生日を目前すでにブラジル代表入りしていたパトだが、今夏にはU−23ブラジにしたパトは、約35億円という破格の移籍金でミランの一員となる。インテルナシオナウ時代同様、デビュー戦でいきなりゴールを挙げて、その名を世界にとどろかせた。

足裏を使った巧みなボールコントロール

 ミラン加入当初、群がる報道陣にイタリアサッカーの印象を尋ねられた彼は、こんなコメントを残している。
「ブラジルとは全然違う。ものすごくマークが厳しいし、余裕を持ってプレーできるスペースはほとんどない」

 素早いプレッシング、強烈なボディーコンタクトを浴びせられるセリエAでは、わずかなミスも許されない。特に最前線で起用されることの多いパトにとってはなおさらだ。その難しい局面の中で、彼は足裏でのプレーを多用する。密集地帯でのトラップ、マーカーが急接近してきた際のボールキープ時には、フットサル経験者であることを物語るかのように、足裏を使って巧みにボールをコントロールするのである。

 フットサルらしさという点で見れば、フェイクを入れてのフリーランニングも興味深い。パト本人も自身の特長として「味方のラストパスやクロスに対してゴールに向かって走り込む時の動き方」を挙げているのだが、相手ゴール前での急激な方向転換と瞬時のスピードアップは、フットサルにも欠かせないプレーの一つだろう。

 パトの目標は世界最高の選手になることだという。そのためか、イタリア国内ではかつてミランに在籍し、80年代後半から90年代初頭に世界最高のストライカーとうたわれたマルコ・ファン・バステンと比較されることも少なくない。イタリア唯一のスポーツ週刊誌『グエリン・スポルティーヴォ』のアレッサンドロ・ペンナ記者は、パトとファン・バステンを比較する際、2人の共通点をこのように述べている。
「サーカスの芸のようなトリッキーなテクニックを持っているにもかかわらず、それを最小限に抑え、シンプルかつ効果的なプレーでゴールを追求する」

 フットサル選手のプレーを想起させるこの言葉は、パトのスタイルを的確に表現していると言えるだろう。

 現役時代、ファン・バステンはその優雅なプレーから「白鳥」というニックネームで呼ばれていた。「アヒル」という意味を持つパトという名の少年も、フットサルで培った技術を最大限に生かして、近い将来、白鳥へと生まれ変わるに違いない。

 

ブラジル代表

すでにブラジル代表入りしていたパトだが、今夏にはU−23ブラジル代表として北京オリンピックに出場し、銅メダルを獲得

ミラン

ミランではカカー、ロナウジーニョとともに攻撃をけん引。“ブラジルトライアングル”の一角を担っている

2006年のクラブW杯

2006年のクラブW杯ではトップチームデビューからわずか3試合目で世界一に

アレシャンドレ・パト(ミラン/ブラジル代表)

Alexandre PATO/ミラン所属。1989年9月2日生まれ、ブラジル出身。179cm/71kg。
スピード、ドリブル、決定力に優れたブラジルの若きストライカー。ミラン在籍2年目の今シーズン、激しいポジション争いを制すると、チームの得点源として大車輪の活躍を見せている。

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